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BOOK_M.GIF - 768BYTES機動戦士ガンダムΣ
第三章 敵
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 ペルセウスが宇宙に向かう少し前、彼らは母船に帰った。

 モビルスーツたちは次々格納庫に納まっていく。コクピットからは戦いを終えた男たちが出てきた。
 「まさか、ガンダムがいるとは・・・予想外だぜ!」
 男たちが数人で楽しく喋っている。それを軽蔑の目で見つめる男がいた。ヘイデン・アスフェルドだ。
 彼は今回の任務で隊長だった。だからこそ今回の不完全燃焼な終わり方には心底腹が立っていた。
 「邪魔だ、どけ・・!」
男たちの塊の真ん中をヘイデンはわざわざ通って行った。
 ヘイデンはパイロットスーツも脱がずにコクピットにむかった。
 「ヘイデン・アスフェルドだ。入る」
コクピットの中には五人の男しか居なかった。
「やぁ、ヘイデン。怪我は無いかい?」
コクピットの真ん中を陣取っている男がヘイデンに笑顔で喋りかけた。
「もう聞いているでしょうが、任務は失敗です。邪魔が入りました」
ヘイデンは淡々と話したが怒りの念がこもっていた。
「あぁ、聞いてるよ・・。アレを盗むくらいワケないと思ったんだが・・まぁ、ガンダムがいたのではしょうがないか。それに基地に潜入した部隊もやられたようだしね」
 男が立ち上がった。すらりと背が高い。ブロンドの髪が肩の近くまで伸びている。男の名はギース・コードル。この艦を率いている男だ。
 「さきほど本部から連絡が入った。あの艦は破壊してはならないそうだ、どうしてもアレを持ち帰りたいらしい・・。どっちにしろアレはまだ目覚めていない・・こちらとしてはやりやすい」
この話を聞いても周りの船員はちんぷんかんぷんだ。しかしヘイデンにはわかっていた。
「なぜ、アレがめざめてないと?」
「私にはわかるのだよ・・私にはね・・」
ギースが物ありげにニヤリと笑った。
「では、ガンダムは?」
「ガンダムについての最善の策は捕獲し持ち帰ること、しかし破壊も止む終えんだろう」
それを聞いただけでヘイデンは満足だった。
「失礼します」

 ペルセウスは無重力の暗い空間を漂っていた。宇宙だ。
 コクピットにいるリブルは必要以上に緊張していた。無理もない、今まで戦艦の指揮もとったことのない男だ。宇宙に出てきて不安がどんどん募っているのだ。
 「だ、脱出ポッドの回収を行う!ポッドの信号をたどれ!」
リブルの声はやや震えていた。だが誰もそれに気づかなかった。なぜなら他の乗員もまたこんな大仕事に着いたこの無い若い兵だからだ。みなリブル以上に緊張している。
「ポッドの信号分析完了しました。ポッドの位置をモニターに表示し、します」
今までの画面と変わり新しい画面があらわれた。
 中心にはセルス。そのまわりに数十個の光が点滅する。
 「ここから近いポッドから回収する!・・それと軍からの連絡は無いのか?もう結構経つと言うのに・・」
リブルが軍に連絡して1時間は経っていた。
「まだ連絡は・・・本当に援軍が来るんでしょうか・・?」
兵が言った。
「来る!かならずな!我々は援軍が来る前にポッドを回収するぞ!」
そう言ったリブル自信も援軍が来るのか不安になっていた。だが、仮にも船長としての役割を果たそうと必死だった。

 「なぁ?あのリブルとかいう奴なんかキモクね?」
船内の小部屋にいたアスフがセリアに言った。もちろんそこまでキモイとは思ってなかった。だが、この部屋に充満する負の空気を打破したかった。しかし、負のオーラをだしている張本人はアスフを軽くあしらった。
「・・・そうね」
セリアが今家族の心配をしているのは重々承知していたがこの雰囲気はアスフのもっとも嫌いなものだった。
 「なぁ、家族を心配してるのは分かるけどもっと明るくしないか・・?こんなんじゃ気が滅入るぜ」
「そう、そんなに騒ぎたいなら騒ぐといいわ!邪魔な私は出て行くから!」
そういうとセリアはものすごいスピードで部屋を出て行った。
 アスフは唖然としたと同時に言葉を間違えたと反省した。だが、時間を置くにつれて釈然としなくなってきた。
「ったく!なんだよ!オレの嫌いな雰囲気を作っておいてどっか行きやがって!あぁイライラする!」
アスフは目の前のテーブルを蹴飛ばしてやろうかと思ったが痛そうなのでやめた。
 アスフはイスに座って気を静めようとした。
 アスフがイスに座ってすぐ後にドアをノックす音が聞こえた。
「ロビアだ。入るよ」
ロビアが部屋の中に入ってきた。
「市長、セルスの住人はどうなってるんですか?」
アスフがぶっきらぼうにロビアにたずねた。
「今から救出に行くところだ、それよりセリアは?」
「知りません、どうせどっかふらふら歩いてますよ」
アスフはセリアの名前を聞いてまた気分が悪くなってきた。
「そうか・・しかたないな、君からセリアに話しておいてくれるといいんだが」
「なんですか?」
「一番近い脱出ポッドの中に彼女の両親がいる、それを伝えて欲しい。それと君の両親はまだ・・・」
「僕の両親はセルスにはいないんで・・・見つからなくて当然ですよ」
「む・・そうか、とにかく頼んだよ。私はこれからすこしの間、独房に行かねばならんのでね、では」
そう言うとロビアは部屋を後にした。
 「セリアに伝えろって・・・ったく」
アスフはイスから腰を上げた。勿論、セリアを探すためだ。

 「艦長!こ、これを!」
ペルセウスのコクピットが騒がしくなっていた。
「どうしたんだ?えーと・・?」
「ダロ・フォッカです。これを見てください!」
 ダロの目の前のモニターを指差した。リブルはそれを見て絶句した。
「これは・・・敵艦!?」
リブルの見つめるモニターにペルセウス以外の戦艦の反応が映し出されていた。
「軍のデータ上にこのような艦はありませんでした・・」
「敵の艦なのは間違いないか・・・しかし、この位置は・・・・ザリオン市長を呼んできてくれ!カカファン!」
「え?またオレ?」
「いいから、早く!」
「わかりましたよ!」
カカファンが足早にコクピットを出て行った。

 ペルセウスの独房。そこは他の場所とは異質の空間だ。白を基調とした船内の中で唯一灰色の壁で囲まれている。
 「こちらです。ロビア市長」
若い軍人が独房に入ってきた。その後ろにはロビアがいる。
 二人は一番奥の独房まで歩いて行った。奥の独房はいかにも頑丈そうな扉でしまっていた。
 二人が独房の前に立つと見る見るうちに頑丈な扉が透明になっていった。そして中の様子が視界に映った。
 中には5人の人間が座り込んでいた。そして、ロビアは中に一人、女性がまじっているのに気づいた。
 「貴様らか、今回のテロの犯人は!」
ロビアの問いかけに誰も反応しなかった。
「何も話さないつもりか、だがこちらとて穏便にいくつもりはないぞ!」
ロビアのその言葉にやっと一人の男が口を開いた。
「へぇ・・バルマのメンバーともあろう人がそんなこと言うんですねぇ・・・」
男はにやけた顔でロビアを見ていた。
「無駄ですよ、私たちは何も言わない・・・我々はあのお方を裏切らない」
男の顔がより一層ぶきみになった。
「あのお方だと・・?テロの首謀者か!」
「さぁ・・?言ったでしょ、何も言わないって・・ククク」
「そう言ってられるのも今のうちだぞ!テロの犯人などすぐに捕まる!」
ロビアの言葉を聞いた男たちがいきなり大笑いをした。
「ハハハハハ!それは無理ですよ市長さん!絶対にね!」
「なんだと・・?」
「彼方が思っている以上に我々は巨大なんですよ、そして何よりも賢い!この戦いに勝ち目は無いよ!?ハハハ!」
男たちはまだ笑い続けている。
 ロビアはこれ以上は無駄と判断したのか独房から出て来た。
「?、この独房には鍵は無いのか?」
ロビアがふと気づいて言った。入るときも鍵を開けたりしなかった。
「あ、はい。自動で鍵がかかるんですココ。中に入りたいときは勝手に空きますし」
「ほう、随分ハイテクだな・・」
 そうこうしているうちに通路の向こうからカカファンが走ってきた。
「市長!市長!大変です!」
「なんだ?どうかしたのか」
「敵艦が・・・!早く来てください!!」
カカファンは息切れしてやや声が聞き取りづらかった。
「何!?わかった行こう!」

 「あぁ、もう!どこにいるんだよアイツ!」
アスフは通路に座り込んだ。もう二十分近く探しているのに見つからなかった。
 「ったく・・・もう一回りしてみるか」
アスフは腰を上げた。
 少し歩くと突き当たりにたどり着いた。アスフは左、右の順に覗き込んだ。すると右の通路の向こうにセリアの後ろ姿があった。アスフは叫ぼうと思った、だが何て言えばいいのか急にわからなくなった。心のどこかで悪いことをしたと思っていた。だから話しにくかった。
 先ほどまでの威勢が失せてしまったせいでセリアはもう角を曲がって行ってしまった。

アスフは立ちすくんだ。自分が悪かったと認めたくなかった。
「だけど今はそんな事・・」
アスフの足はもう動いていた。アスフはすごいスピードで、もう角を曲がっていた。
「セリア!」
アスフの叫び声にセリアが振り向いた。
「ったく・・こんなわけわかんないとこまで着やがって・・」
「・・・・何しにきたの?」
セリアの声は冷たいものだった。だがアスフは気にせずに本題にはいった。
「お前の両親が今向かってるポッドに居るみたいなんだ、だからそれを伝えにきた」
それを伝えると同時にセリアの顔がみるみる元気になっているのがわかった。
「そ、それ本当?誰が言ったの?」
「ロビア市長」
「そう、じゃあ本当なのね!」
セリアの顔が笑顔でいっぱいになった。
「んだよ・・おれが言っても信用できないのかよ」
アスフはすこし傷ついたがセリアの笑顔を見てどこかほっとした。
「じゃあ、もう部屋に戻ろうぜ」
アスフの言葉にセリアはコクンとうなずいた。二人はゆっくりと部屋への道をたどっていた。
 アスフが部屋の前に立ったとき誰かが走ってくる音を聞いた。アスフは通路の向こうにロビアが息を切らしてこちらにやってくるのが見えた。
「どうしたんですか?」
アスフの質問にロビアが即座に答えた。
「敵艦がちょうど悪いところに現れた・・」
ロビアはセリアがいることに気づき言葉を選んだ。
「あぁー・・その、敵艦が近くのポッドのちょうど反対にいる・・・だが安心しなさい」
これほどまでに信頼感のない『安心』という言葉をアスフは初めて聞いた。
 「どういう事ですか?私の家族はどうなるんですか?」
セリアがロビアにすこし詰め寄った。
「大丈夫だ、ポッドの救出は必ず行う。必ずだ!」
そういったロビアの顔に余裕は感じ取れなかった。
「とにかく君たちは部屋にいなさい、絶対に離れてはならないよ!」
そういうとロビアはコクピットへ走っていった。
 アスフは青ざめたセリアを部屋に入るように促した。セリアはすぐに座り込んだ。
「なぁ・・きっと大丈夫だって・・今さっき俺たちも助かったし」
アスフの言葉にセリアは何の反応も見せなかった。しかし、アスフは気にせずにまた話し出した。
「なぁ・・だから顔あげろよ、ここで落ち込んでても何もならないよ・・」
「じゃあ、どうしろってのよ」
セリアが急に顔を上げて叫んだ。目にはいっぱいの涙がたまっていた。
「どうしてこんなことになったの!?なんでこんな目にあわなきゃならないのよ!」
セリアはそういうとまたうずくまってしまった。
 アスフは呆然とそこに立ち尽くした。しかし、ここにいてもどうにもならないと確信した。
「おれ、コクピットの様子見てくるよ。お前はここに居ろよな」
そういうとアスフは電光石火のごとく部屋を飛び出した。コクピットの場所はわからなかったがとにかくロビアの走って行った方向に向かった。
 しばらくすると正面に他の扉よりもすこし大きい扉が見えた。アスフはそこの部屋に駆け込んだ。
 「!?アスフ君、なぜここに?」
ロビアが驚いた顔で目の前に立っていた。
「いや、あの・・今の状況が知りたくて」
アスフは肩で息をしながら言った。
「そういうことか・・・今状況は非常に悪い・・」
「悪いって?」
「敵艦の位置が、だよ」
リブルが後ろから口を出してきた。
「今我々が向かっているポッドの向こう側に敵艦がいるんだ、このままポッドに向かえば・・」
「敵艦とちょうどよくお見合いになるってことだ」
ロビアが深刻な顔で話した。
「じゃ、じゃあ、ポッドはどうなるんですか?」
「それが問題だ・・やつらはポッドを破壊して回っているんだ、さっきも二つ破壊されるのを確認した」
コクピット中に暗い沈黙がながれた。
 「先にポッドは回収できないんですか?」
「できない、最高速度でいっても必ず奴らは追いつく・・こちらの戦力では太刀打ちできん」
リブルが頭を抱えて話した。
「じゃ、じゃあ・・ポッドをあきらめるんですか!?」
アスフが確信をついた。
ロビアはすこし口をパクパクさせたが何も声は出てなかった。
「いや、私はあきらめてはいない、だが・・」
ロビアはちらりとリブルの方をみた。
「私はポッドの救出に向かいたい・・だが、ここの艦長は彼なのでね」
「わ、わたしだって救出したいですよ!しかし・・」
リブルはそういうとうつむいて何も言わなくなった。
静かになったコクピットで最初に声をだしたのはアスフだった。
「でも、助けないと・・あそこにはたくさんの人が居るんですよ?」
「・・・確かにそうだ・・あぁ、そうだとも・・このまま逃げれば私はいい笑いものだよ」
「ならば行かねばなるまい、リブル」
そういったロビアの目は微動だにせずリブルを見ていた。
「・・わかりました。行きましょう・・できるなら援軍を待ちたいですが・・来る気配すら無いし・・」
そういうとリブルはコクピットの船員たちにポッドに向かうように指示を出した。
 「これから忙しくなりそうだ」
ロビアが言うのをアスフは聞き逃さなかった。
 これからペルセウスは火の中に飛び込むのだ。
 そして決戦は刻一刻と近づいている。

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