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第二章 Σ

> 白く巨大な戦艦が姿を現した。そう、ペルセウス。今この戦艦に視線が注がれている。
 「奴ら、任務を失敗したか・・・」
ヘイデンの目はすでにペルセウスに向けられていた。
 アスフもペルセウスに焦点をあわせていた。
「何だあれ?・・・連邦の戦艦?」
「私は・・・・」
ガンダムのコクピットの中に聞きなれない声が響いた。
「私は地球連邦軍リブル・ロメット大尉である。君達の行為はテロ行為とみなされそれ相応の対応をとる事をここに宣言する。すでにテロ行為を加担していると思われている者達はこちらで拘束している。すでに連邦軍艦隊もこちらに向かうよう連絡を入れており君達の制圧は時間の問題である!」
雄雄しくも果敢な声は一帯のモビルスーツのパイロットに届いた。
 「ペルセウスは手に入らなかったか・・・しかしアレを破壊さえすれば同じこと・・・・」
ヘイデンのモビルスーツが爆音を上げて飛び立った。その先にはペルセウス。
「大尉!モビルスーツがこちらに向かって来ます!」
若い兵が声を荒げて言った。
「言っても駄目か・・期待はしてなかったが・・まぁいい!ペルセウスの火力とくと見せてやろう!」
リブルが兵に合図を送った。
「照準十二時の方向!・・・発射!」
リブルの掛け声とともにぺルセウスに装備されたミサイルが唸りを上げた。
 ミサイルは瞬く間に大空に解き放たれた。
「まだだ!両門のビーム砲も発射準備!コロニーにあてるなよ・・・・発射!」
今度は青白い閃光が飛び交った。二本の光は一直線にヘイデンに向かって伸びた。
「面白い・・・・その鈍い攻撃でオレを落とせるかちゃんと見ておくがいい・・・・!」
ヘイデンの乗るモビルスーツは非常に機敏だ。それでもって確実に相手をしとめる術も知ってる。それは今も同じだ。
 モビルスーツはぐんと加速して上昇した。ミサイルも付いてくる。もちろん避けようと上昇したのではない。
 モビルスーツは一丁のビームライフルをミサイル郡にむけて放った。最初は数十程度の破壊。しかし爆発は爆発をよんだ、誘爆はミサイルのほとんどを巻き込んだ。残ったミサイルも丁寧に打ち抜かれていく。
「さて、あとはそのビームかい?」
爆発の煙幕の中からビームが二本にゅっと伸びてきた。
「浅知恵だ・・・」
一本はシールドに二本目は取り出したサーベルに弾かれた。
 「今度はこっちの番だ・・・・!」
ヘイデンの機体がもうスピードでペルセウスに向かう。
 ヘイデンの機体は素早く戦艦の下に潜り込んだ。
「ここは・・どうだ?」
ビームライフルから三発の光が照射された。しかしそれは戦艦に当たる前にかき消された。
「!・・・・まさか・・」
「船底にもぬかりはない!あまいな、テロリスト!」
リブルは勝ち誇ったように高笑いした。
「船底ミサイル発射!迎撃用バルカンもねらえ!」
 ヘイデンは距離をとった。彼にとって回避は目をつぶっててもやれる。
「ふむ・・タイムオーバーだな・・」
リブルの機体が百八十度方向を変えた。
「離脱だ!」
テロリストのモビルスーツ達が合図を待っていたかのように一斉に宙に舞い上がった。
「また会おう・・・」
モビルスーツの大群があっという間に小さな点となった。
 「大尉・・・敵がすべて重力圏から脱出したもようです」
「ちぃ!もうちょっと見せたいものあったのにぃ!」
「コラ!」
「ごめん」
すこしの沈黙が流れた。
 「で、下のアレどうするんです?」
誰かが言った。
「む?あれとはなんだね?ええと・・・?」
「カカ・ミニマルクス・アーネル・ファンデルです。カカファンでいいです。階級は伍長です」
 コイツなんかうぜーな。と思いながらぶっきらぼうにリブルが話した。
「で、下のアレとは?」
「あの白いヤツですよ・・ほらあれ・・!」
カカファンの指差した方にアスフの乗るガンダムが立っている。リブルはその姿を目にした瞬間、胃が落ち込むような感覚がした。
「な、何であれが!?え?壊れたと思ったが・・・いやいやよかった!あれ?でもなぜあそこ?立ってる?」
しばらくの間リブルの情報処理能力は機能しなかった。
 そしてふと機能が戻った。
「あれに回線を!」
船員がすばやく仕事を終えた。
「そこのガンダムに搭乗している輩め!おとなしく出てくるがいい!さもなくば・・・!」
アスフたちは話を全部聞く前にハッチから出て行った。
 まもなくペルセウスが降下してきた。中からは銃をかまえた軍人が数人降りてきた。
「手を上げたまえ」
いかにも自分が一番偉いと言いたげな軍人が喋った。
「さて聞きたいことが山ほどある中へ来て貰おうか・・」
「そうか、それはありがたいね・・」
アスフが肩を貸していた男が微笑みながらいった。
「ザリオン・ロビア市長!」
リブルの思考回路はもはや破壊寸前だ。
「彼らは私の友だ・・安心したまえ・・」
「はい!はい!わかってますとも!さぁさぁ中へ!ココアを用意しろ!」
 アスフはふらつくセリアを助けながら椅子に座った。道のりはまったく覚えてはいなかった。
 「さて・・」
リブルがココアを三人の前に置いて話を切り出した。
「なぜアレに乗ってたのですか?」
喋るリブルの顔を見て以外に若いなとアスフは思った。そして、ロビアが話だした。
「ふむ・・われわれはポッドに乗り遅れたのだ。そしてテロリストに追い詰められそうになった。そこでモビルスーツで対抗しようとし基地に入ったところ・・」
「アレを見つけたと・・・ふむ・・いや、あなたがたが見つけてくれてよかった。・・・・あれ?ココアは嫌いですか?おい!カカファン、コーヒーだ!」
カカファンがコーヒーを持ってくる前にロビアが口を開けた。
「あのガンダムは何です?この戦艦もだ。テロについても!」
ロビアの顔が強張ったのをアスフは見逃さなかった。
「ええと・・ガンダムとこの戦艦ペルセウスは軍が秘密裏に開発した最新鋭の物でして・・」
間髪入れずロビアが怒った。
「何と!まったく!こんなことを私にも秘密にするとは・・・!ここは中立の立場ですよ!?あなた方に基地を置くのを許したのは単に中継地点として使うと言ったからだ!」
ロビアの怒りはすさまじかった。リブルも完全に困り果てた様子だった。
 「まぁまぁ・・!軍としてもあまり目立たないところで作ることがいいと考えたのです・・。ご理解ください・・・」
「理解!?それは・・・!まったく!もって!不可能だ!」
ロビアの大声に近くの若い軍人たちが耳を塞いだ。不運にもコーヒーを運んできたカカファンはあまりの大声に驚いてコーヒーをすべて落としてしまった。
「そう大声を出さないでください・・・・。カカファン何してんだ!早く拭け!」
カカファンは近くにあった布きれで床を拭き始めた。
「あんなもの作っていることが知れたらここがテロの標的なるとは思わなかったのか!?軍がここまで浅はかとは!これだから反乱は止まらんのだよ!バルマがどんなに努力しようがこれでは意味がない!」
 ロビアの言ってることは正しかった。若い軍人たちもそりゃそうだと言う顔でリブルを見ていた。
「そう!そうですよね・・。しかし私ごときの力では何もできないのです。・・・カカファンなんか飲み物持って来んかい!」
カカファンは一瞬リブルを睨み付けて掃除を他の兵に任せて飲み物をとりにいった。
 「テロの犯人については!?何か掴んでないのか!?」
明らかにロビアの怒りは最高潮だ。アスフはとばっちりを受けないように黙りこくっていた。
「ええその事ですが・・まだわかってないです・・はい」
ロビアの目が獲物を狙う猛禽類の目に似てきたのを感じ取ったのかリブルは即座に付け加えた。
「しかしテロリストの仲間は捕まえてます!牢に閉じ込めてます!必ずや彼らから情報を引き出しましょう!」
リブルが突然雄雄しい声をあげた。アスフはそこで初めてペルセウスが出てきたとき敵に向かって話していた声の主が彼だとわかった。
「ほう・・それはよかった。話をかえるが住民たちはもう救出しているのかい?」
「はい、もちろんです。しかし・・」
「しかし・・なんだ?」
「彼らが私たちをテロリストと疑って出て来ないのですよ。・・まったく困ったもので・・・」
そこにカカファンがなにやら黒い液体を持ってきた。
「どうぞ」
カカファンが三人に液体を配るのをリブルが静止させた。
「何だ?それは?」
リブルは液体をまじまじ眺めている。
「ええ、かるい炭酸飲料ですよ」
カカファンの言ったことが間違いだったと理解するのに時間はかからなかった。
「馬鹿者!ロビアさんがジュースを飲むものか!あ・・君達はこれでいいかい?」
リブルがやさしくアスフとセリアに話したのでなんだか気持ち悪かった。
「あ、はい。いいです」
 二人とも特に喉は渇いては居なかった。しかし、カカファンが悲しげにこちらを見ているのに気づいた二人はおとなしくジュースに手を出した。
 ジュースを飲んだ後にアスフが言ったことでまたカカファンに悲劇が起きた。
「炭酸ねぇや・・」
アスフ自身、はっと気づいた。カカファンは青ざめている。
「カカファン!なんで炭酸の無いものを出した!」
「大尉、それは・・・ええ・・さっきの無理な動きのせいで炭酸が完全にぬけた様で・・・私が気づいたときにはもう・・・」
リブルの顔が真っ赤になった。
「ええい!貴様わたしが戦艦を動かしたせいだとでも言いたいのか!?」
「いやいや!違います!」
弁解の余地は無かった。
「新しい飲み物を持って来い!今すぐにだ!」
カカファンが歩き出したときロビアがカカファンをとめた。
「いや、私は喉はかわいていない・・・君達もそうだろう?」
「はい」
アスフもセリアもそう言った。
「そうですか。おい!行かなくてもいいぞ!」
 「それより町の状況を把握したい」
 ロビアが腰を上げた。
「わかりました。私も同行しましょう。君たちは部屋で休んでなさい。そこのヤツ!彼らを部屋に」
そうゆうとリブルは腰を上げた。
「そうだ、忘れていました。私はリブル・ロメット大尉です」
そう言うとロビアとともに部屋を出た。
 二人も兵に連れられて部屋を出ようとした。その時カカファンが小さい声で仲間の若い兵と話すのを確かに聞いた。
「ったく!あの大尉さんは何でオレばかりをこき使うんだ!?オレに何か恨みでもあるのか!?」
そう言うと若い兵がニヤニヤした顔つきでカカファンに言った。
「そりゃあ、あれさ!あの大尉さんはお前の名前しか知らないのさ!」

 それから数十分はすぎただろう、アスフは時間も気にせずただ座っていた。セリアも座って黙りこくっていた。
 アスフはセリアが今家族や友達の事を考えているのだろうと思った。
「みんな大丈夫さ」
アスフの声が一オクターブはずれた。
「うん、で・・・」
巨大な爆発音にセリアの声はかき消された。
「何だ!?」
 アスフはすぐさま部屋を出て通路に出た。兵達も混乱していた。
「何があったんだ!?」
「わからん・・!」
兵達の会話にアスフは耳を傾けた。
 「お前、様子を見て来いや」
「わかったよ・・」
兵の一人が通路の奥に姿を消した。彼がここに戻ってくるのに一分もかからなかった。顔は真っ青だ。
「爆弾だ!コロニーのそこらじゅうに・・・!緊急に非難する!」
辺りが余計に騒がしくなった。アスフは全速力でコクピットに向かった。
 コクピットの中から幾つもの声が聞こえた。アスフは何の合図もなしに中に乗り込んだ。
 中にはすでにリブルが指示を出していた。ロビアもいた。
「アスフ君!なぜ部屋にいないんだ?」
ロビアが周りの声のどれよりも大きく言った。
「状況が知りたくてね」
「いいだろう。コロニー中に爆弾が設置されていた。おそらくコロニーがもたない・・我々は宇宙に脱出する!」
「住民は!?」
「大丈夫。あれをみてごらん・・」
アスフはコクピットから外を眺めた。地面からいくつもの光が空に発射されていく。
「脱出ポッドが宇宙に放出されている。あとで回収するから心配ない。」
ロビアが唖然としているアスフに説明してすぐにペルセウスが動き出した。
「よし!浮上だ!」
リブルの声が響いた。
 そして一向は宇宙へ。

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