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> BOOK_M.GIF - 768BYTES機動戦士ガンダム 〜NO WHERE MAN〜
第六章 ラディオス・グレイバーン

> イチロウは部屋に戻る途中に一人でトイレにいった。
トイレの中には男が一人。アンガスだ。
アンガスはイチロウに気づくとイチロウに向かって歩いてきた。

「オ〜!イチロウさ〜ん!」
「アンガスか・・」
「どうしたんですか?」
「・・・・あの後どうなったの?」
 アンガスの眉がピクリと動いた。アンガスは周りを注意深く見渡した後、小声で言った。
「なんとか気づかれずに済ませることが出来ま〜した・・」
「・・・コルファンは?」
「ウ〜ン、ひきこもってま〜す。部屋から出てきませ〜ん」
 コルファンがショックを受けていることは予想できたが改めて聞いてみるとイチロウの胸は締め付けられるようだった。
 「犯人とか見つかんないの・・・?」
この質問を訊いた。アンガスの顔が暗くなった。
「オ〜なんにもわかってませ〜ん・・・。ただ、バディガさ〜んが争った形跡がないので〜す。顔見知りかそれとも気づかないうちに一撃か〜です・・・。ただ・・」
意味深にアンガスが付け加えた。
「ただ・・・・?」
「彼は格闘の達人で〜す・・・。後者は考えずらいのデ〜ス・・・。彼を一撃で倒すなんてバケモノで〜す」
「じゃ・・じゃあ、顔見知り・・・?」
「可能性が高いデ〜ス・・・」
 場が沈黙した。急にイチロウはこの場に居づらくなった。
「じゃあ行くよ」
「お〜っと、待ってくださ〜い」
「え?」
「グライムが呼んでま〜す」
「え?誰!?」
「おおう、艦長で〜す!」
「あ、そうなの?」
「そうで〜す、コクピットに行ってくださ〜い!」

 イチロウはアンガスに言われたとおりにコクピットに来ていた。
「失礼します」
そういうと、扉は勝手に開いた。中にはグライム艦長がいた。
 「やぁ、イチロウ君。気分はどうだい?」
グライムは昨日とは打って変わって笑顔だった。
 「早速本題に入らせてもらうよ。レジスタンスの兵士養成所に行かないかい?」
「は・・?」
「モビルスーツやモブルアーマーに乗って戦ってくれる兵士を育てるところさ。今レジスタンスは兵士の数が足りなくてね・・・・。君みたいに敵と戦う勇気と実力がある者ほど欲しいんだ」
「でも、母さんがなんていうか・・」
「それなら心配ない、お母さんは喜んでいたよ」
「えっ!?母さんが?」
イチロウはそれがショックだった。いや、ショックを通りこして怒りが沸いてきた。
“親なら喜ぶなよ”と心の中で叫んだ。
「コレは強制ではない、まぁよく考えてみてくれ」
そういうと艦長はイチロウを開放した。
 イチロウは早い足取りで部屋まで着いた。艦長がもうすぐ到着すると言ったからだ。
 部屋の中ではダンディがベッドに座っていた。
「やぁ、やけに長かったね」
「あぁ・・ちょっとあってね」
 イチロウはベッドに座り込んだ。養成所が一体どんなところなのか想像を膨らませてみた。だが、どんなに考えても鬼教官にびしばしシゴかれる古臭いイメージしか浮かばなかった。
 イチロウは思い出したように荷造りをはじめた。
 荷造りを始めてまもなくバイタリティーが減速するのを感じた。そしてアナウンスが流れた。
「只今、アメリカへ到着しました。本部へ着くまでに時間がありますので各自準備をお願いします。艦から降りる順番は部屋番号順です」
「基地まで何分ぐらいなんだろ?」
イチロウがポツリとつぶやいた。
「さあ・・どうだろうね・・・。詳しい場所を教えられていないんだよ」
ダンディが荷造りをしながら話した。
「え?ダンディも知らないの?」
「ああ、本部の詳しい位置なんかは私たち一般市民は知らない、日本の基地ぐらいいしか私は知らないよ」
「本部の情報を流出させたくないのです、あんな事件があったんですから・・・」
 いきなり話に割って入ってきたのは黒人だ。あの2メートルあるかないかの黒人だ。
「どうも、私の名前はボブ・ジョーンズ。以後お見知りおきを・・」
ボブはやっとあいさつできたと言う顔だった。
「あ・・どうも、イチロウ・イシイです」
「私はダン・オプセン。ダンディでいいですよ」
ボブとダンディはなぜかがっちり握手した。
 ボブは体の大きさとは似合わず非常にゆったりとした喋りをする。喋っただけで彼が穏やかな性格なのはすぐわかる。
 「ええと、ボブ・・今言ってた事件て・・・・?」
イチロウはボブに問いたずねた。ボブの顔が暗くなった。
「ちょうど一年前です・・・。レジスタンスの本部は今向かっているところとは別のところにありました。だけどその基地を放棄せざるをえなくなったのです」
イチロウはボブの話に吸い込まれるかのように聞き入っていた。
「ど、どうして・・?」
「・・・本部に向かって行たレジスタンスの集団が連邦につかまったのです。彼らは連邦に無理やり本部の場所を吐かされました・・。彼らはその後銃殺刑にされました・・・」
 イチロウはボブの話したことを鵜呑みに出来なかった。いつの間にかつばを飲むことを忘れていた。
 「連邦はすぐにレジスタンス本部に攻め込む準備をしました。しかし本部もそれを察知してすぐさまひとつの作戦を立てました」
「作戦・・・?」
「詳しくは知りませんがおとり作戦のようなもので当時本部の近海で開発していた島型巨大移動戦艦をおとりにして二番目に規模の大きい今の基地に撤退するというものでした」
「で、でも成功したんでしょ?」
ボブの目がイチロウをにらみつけた。
「成功?見つかった時点ですでに失敗です・・・。レジスタンスの被害は膨大でした。・・・連邦はおとりの戦艦に六割の戦力を当てました。四割は本物の本部にあてられレジスタンス史上でも最悪の戦いでした」
 場が冷たい空気に汚染されているようだった。バイタリティーがさっきより減速していることにイチロウはやっと気づいた。
 「本隊は無事逃げることに成功しました。しかし分離した戦艦組は誰一人として生きて帰れなかったのです・・・。戦艦が未完成ということもあって彼らは苦戦を強いられました。彼らは七日間も連邦と戦い、逃げることを繰り返しました。・・・そして作戦の最終日の七日目です、彼らは本隊からの連絡で帰還することを許されました。新しい本部は地下水脈をたどって着くことができるそうで彼らは連邦に気づかれずに小型潜水艇で水脈まで向かっていました。・・・しかし」
「・・・・みつかった・・・?」
「そう・・彼らは最後の最後に見つかり殺されてしまった・・・」
ボブのくちびるが震えだしたのをイチロウは見逃さなかった。
「なにより・・・戦艦で戦っていた兵士の多くは経験の浅い若いものたちばかりだった・・兵士の数が足りずに彼らは戦地に送り込まれたのです・・・・・」
ボブの目からとうとうひと粒の液体がこぼれだした。
「中には私の友達もいました。・・・それに・・・ケルヴィン・マーブレック、レジスタンスの英雄でした・・・まさか彼まで死ぬとは・・・」
 イチロウもダンディもどうボブに話しかければいいのかわからなかった。イチロウはいつの間にかこぶしを目いっぱい握り締めていた。今までのうのうと生きてきた自分が恥ずかしくなった。
 急にボブが立ち上がった。
「もうこの部屋の順番みたいですね、行きましょうか」
ボブはそそくさと部屋から出て行った。
 いつのまにか艦は基地に着き、もうこの部屋からでる時間にまでなっていた。
 イチロウは荷物を手に部屋を出た。足取りは重かった。途中、ダンディが何か言おうとしていたが結局言わなかった。
 二人はすぐに出口までついた。出口には男が一人立っていた。
「B012号室の方ですね?ここを出たら真っ直ぐ進んでください。人の流れですぐわかります」
男は簡潔に言い切った。イチロウたちも何も聞かなかった。
 バイタリティーから出た瞬間イチロウは唖然とした。無理も無い、そこはとてつもなく巨大な格納庫の中だった。
「すっげー・・・・こんなでかい格納庫見たこと無いよ・・」
ダンディも唖然としていた。
「すごいねぇ・・・・お!あそこをみてごらん」
ダンディが指差した方向に八隻もの戦艦があった。その向かいにもまたある。よく見るとバイタリティーの横、後ろのもあった。
 イチロウとダンディが周りを見てる間にバイタリティーから別の部屋の人々が出てきた。
 「もう行こうか」
ダンディが言うとイチロウも軽くうなずいた。
 二人はすこし急いで歩いた。真っ直ぐ前を見ると人の列が見えてきた。二人は列の最後尾に着けた。イチロウは列についていきながら周りをよおく観察した。
 気づくと列はバラけており、巨大な広間に着いていたことに気づいた。
「で、でかい・・・戦艦すっぽり入りそうだな・・・」
 イチロウの言うとおり広間は戦艦ぐらいの大きさだった。そしてそこに響く声もまた大きかった。
 「あー・・・・うん、マイクはいいな。よし、レジスタンスの同胞よ!よくぞ集まった!」
見知らぬ男のスピーチに周りが沸いた。
「あー、これから総裁のスピーチが始まる。それまでの時間、雑談でもどうぞ」
男はそういうと奥の通路に消えた。
 イチロウとダンディは後ろから来た集団に押されて奥まで流されていた。

 「なんだとっ!?バディガが死んだ!?」
本部の会議室に声が響いた。会議室には十名以上の男たちが集まっていた。
「詳しい情報は本部に送ったはずです」
グライム艦長が言った。
「ふん、グライム。お前が艦長などやってるからこうなるんだよ」
部屋の隅に座っていた陰気な男が噛み付いた。
 この男はレジスタンス開発部責任者バルボン・キーナフ。この男がレジスタンスで嫌われている理由は大きく二つある。
 一つは陰気で危険な兵器ばかり開発したがっているからだ。そしてもう一つはその見た目にある。顔は傷だらけで右目は義眼だ。右腕も義手と気味悪いとはこのことだ。
 「もう一度言ってみろ・・・キーナフ!」
キーナフとグライムは一触即発だった。
「やめんか・・・二人ともみっともない」
白い口ひげを生やした老兵が言った。
 ギールデン・バイロス。レジスタンス大将で実質ナンバー2の男だ。他の幹部もこの男には頭が上がらなかった。幾度も死線を越えた経験だけではない、老いてもなお、曇らないその眼光に誰もが一目おいていた。
 「総裁、やはりスパイが・・・」
バイロスが奥で静かに話しを聞いていた男に話しかけた。男は静かに口を開いた。
「日本支部から来た者の中にスパイがまぎれているのは確かだ。もう一度身元を洗いなおせ」
これを言ったのは紛れも無い、現レジスタンスのトップ。総裁のラディオス・グレイバーンだ。
「皆のものには知られていないだろうな」
「それが・・・第一発見者が三名ほど」
「誰かね?」
ラディオスの一言一言に何か凄みがあった。
「司令部のコルファン・アマレル、一般者のダン・オプセン、イチロウ・イシイです」
「ほう・・・イシイ・・・君の息子だったかな?」
ラディオスの目線の先にイチロウの母がいた。
「そうです」
 「なるほど・・・まぁこれは後にしよう、ところでグライム?」
「はい」
グライムはいきなり話を振られてすこし驚いた。
「死因の爆発とはどういうことかね・・?」
「・・そのままです。脳内部が爆発したと」
グライムの話を聞いて周りがざわめき始めた。
「それは新兵器か・・・・あるいは・・・・。キーナフ、この様な殺害方法は可能かね?」
キーナフは意地の悪い顔で答えて見せた。
「いいえ総裁。私の知ってる兵器では無理ですとも」
「そうか・・・・」
 コンコン。誰かがノックして部屋に入ってきた。
「総裁、そろそろ」
「うむ、わかった。それでは皆のもの、行こうかね」
 そういうと全員が立ち上がった。そしてラディオスの後ろに着いた。

 「あぁぁぁぁぁ・・・!遅い!」
待つのに耐えかねたダンディが痺れを切らした。それはイチロウも同じだった。立ちつづけで足が疲れていた。
「確かに遅すぎるよ・・・。でも叫ばなくっても・・」
「うぅぅ・・私も我慢の限界・・」
 ダンディが喋っている途中、おくの通路から男たちの集団が現れた。広間にいた人全員が息を呑んだ。
 さっきスピーチしていた男がまたマイクを取った。
「総裁が到着しました。これからスピーチをしますので静粛に・・」
そういうとマイクはある男に渡された。
 イチロウはこの男が総裁であることを確信した。他のものとは比較にはならないオーラ。これがすべてを物語っていた。
 「私が総裁のラディオス・グレイバーンだ!」
広間が一瞬で歓声に包まれた。
「みな集まってくれてありがとう!残念ながら本部にこれずにモニターから見ているものたちにも礼を言う!よくぞ来た!」
 ウオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッッッ!
地響きのような大歓声だ。
 「我々はこれから連邦軍との最後の戦いに挑む!」
すこし場が静かになった。
「あんずるなっ!我々には正義がある!連邦の腐った正義ではない、真の正義が!」
 ウオオオオオオオオオォォォォォォォッッッッ!
「我々は勝つ!そしてレジスタンスを作った五人の勇士!アザベン・ヴィルヘルム、プリム・アリーエン、ウーデム・クロン・タム、ザリオン・ロビア、エーク・ライアン!彼らの願い・・・それは真の平和ッ!我々は連邦を倒しそれを手に入れる!」
 ウオオオオオオオオオォォォォォッッッッ!
 広間は最高にヒートアップしていた。
「ハハハハッ!静粛に、静粛に・・・ここでみなに紹介せねばならん人たちがいる」
総裁がそう言うと奥から三人の男が現れた。
「今まで我々に出資してくれていた大富豪のドンド・パンさんだ!」
ドンドはみんなに手を振った。
「そして新しい出資者のグング・トロさんだ!」
 わぁぁー・・・。
数人が喜んだフリをした。
 「そして最後にもう一人新しい出資者、ジオーネ・パレインさんだ!」
 ウオオオオオオォォォォォッッッッ!
「あの人テレビで見たことあるよ!」
イチロウが大声で聞こえるようにダンディに言った。
 三人がまた後ろに下がり総裁が再び話し始めた。
「これから戦火が激しくなるだろう!このような宴ももうできなくなる!さぁ!最後の宴を楽しもう!」
 そういうと奥からすごい数の料理が運ばれてきた。
「すげぇぇぇ!」
イチロウとダンディが歓喜した。
 二人は目の前に運ばれてきたチキンにかぶりついた。
 そんなイチロウを遠くから見つめる者たちがいた。
「ふん・・・あれが・・・か?」
男が隣の男に喋りかけた。
「ああ・・・そうらしいな」
「くく・・・はははっ!あれが?笑わせるなよ」
「そういうな、奴も大事な人材だ」
「人材?あんなガキがか?オレなら五秒以内で殺せるぜぇ?あのオッサンみたくなぁ!ハハハハハッ!」
「ふふ・・・まぁ今は宴を楽しもうじゃないか、この世の終わりまで続く戦いを告げる宴をな・・・・」

 一時間ほどたち広間も静けさを取り戻していた。人々も自分たちの戦艦に戻り始めていた。
 会議室では会議が始まっていた。
「さて、はじめようか・・」
ラディオスが周りを見渡した。
「グライム、乗員の身元は洗ってくれたかね?」
「はい、しかし怪しい者はいませんでした」
「ふむ・・そうか、しかたない本部で独自に洗ってみよう。・・それでは本題に入るかね、今回連邦を攻めるにあたってだが」
 「総裁!よろしいですか?」
「何かね?トーゴ?」
 彼の名前はトーゴ・ブリズベン。彼は位は高くはないが今回の会議に関与しているので呼ばれていた。
 「宇宙の奴らは動くんですか?」
「いや、まずは我々だけで動く。しかし、ここで問題が起きた」
 「兵力が足りないのでしょう?」
一人の男が淡々と言った。
「その通りだ、ヤレン」
 彼はヤレン・ヤルカンド。彼もトーゴと同じ理由で呼ばれていた。
 「そこでトーゴ、ヤレン、君たちに兵士養成場の指揮をして欲しい」
「我々が!?」
トーゴは驚きのあまり声がうわずっていた。一方のヤレンは平然としていた。
「他にもこちらから数人の者を配属するが君たちがトップに立って新米を鍛えてくれ」
「はっ!」
「では早速だが明日養成場行きの戦艦がでる、それに乗ってくれ」
「わかりました。・・っとそれと」
ヤレンが思い出したように言った。
「私の部下を連れて行ってよろしいですか?」
「ふむ、よろしい」
「ありがとうございます」
「ではもう行きたまえ、準備があるだろう」
そう言われるとヤレンとトーゴは会議室を後にした。
 二人は黙々と廊下を歩いた。だがトーゴが我慢しきれず口を開いた。
「へへっ、まさか俺たちにこんな大仕事来るとはなっ!」
トーゴは鼻息が荒かったがヤレンはいたって冷静だった。
「ふん、私なら当たり前だ。次期に私は総裁に上り詰めるのだからな」
「まったく、野心家なのはいいがもう少し喜べよ・・。オレがバカみたいじゃないか。それにお前が総裁になる頃には戦争は終わってるよ」
「ふっ、終わる前になるさ」
 やがて廊下は突き当たりにたどり着いた。
「私は部下に報告するのでな」
そういうとヤレンは右に曲がって行った。

 「はっ〜〜〜〜・・・・・」
イチロウが大きなため息をした。
「どうかしたのかい?」
イチロウとダンディはすでにバイタリティーに戻っていた。
「いやさ、何かレジスタンスの養成場だかに行かないかって言われてさ」
「何ッ!?私は聞いてないよ!」
「そりゃね・・・」
 二人の会話の途中にアナウンスが割って入ってきた。
「今回レジスタンスでは兵力不足を補うために養成場が設立されることになりました。養成場に行き兵士になってくれる方を募集します。協力してくれる方は三十分までにエントランスに集まってください」
ここでアナウンスはプツリと終わった。
 「コレのことかい?イチロウ君」
ダンディが渋い顔で言った。
「・・うん」
「で、どうするんだい?」
「どうするっていわれてもなぁ・・・・」
「親御さんは何て?」
「母さんは承認ずみ・・」
「父親はどうなの?」
そう言ったダンディはすぐにこの発言が言ってはならなかったと気づいた。みるみるうちにイチロウの顔が嫌悪感をあらわにしていることに気づいたのだ。
「さぁ?あいつ何て知らないよ」
「父親をあいつなんて呼んじゃ駄目だよ」
「父親なんてものじゃないよ!あいつは母さんと僕を捨てたんだ!もう顔もよく思い出せないし・・。覚えてることはあいつがずっと部屋にこもって何か研究してたことぐらいだよ」
イチロウが大きな声で言ったのでダンディは内心ビビっていた。
「むぅ・・・すまん・・・」
「いいよ・・」
場が静まった。
 ダンディが勇気を出して話しかけた。
「それで・・行くのかい?」
 「行きなさい」
第三者の声が耳を通過した。ダンディとイチロウは後ろを振り返った。
「!?母さん!」
いつの間にか部屋に母さんが立っていた。
「行けって・・・少しぐらい引き止めろよ」
「あなたなら大丈夫よ!」
「どっから沸いて来るんだよその自信は・・・」
「さぁ行きなさい!」
「・・わかったよ!」
イチロウは早足で部屋を飛び出た。
「ったく!なんなんだよ!」
 バイタリティーをでてすぐにエントランスが見えた。そこにはすでに二、三百人の人が見えた。
「すげー人だなぁ・・・」
イチロウは周りの人を見渡した。皆イチロウより年上の者ばかりだったがちらほらと同年代の少年がいることに気づいた。
 10分ほど経っただろうかもう人が来る気配が無くなった。それにあわせるようにマイクで男が話し始めた。
「もう集まったかな・・・?よし、では自己紹介を・・。ごほん・・んん・・よしよし、えー、私はトーゴ・ブリズベン!君らの教官だ!しかも養成場副長官である!ハハッ!驚く無かれ・・・これからは君たちをみっちりしごくぞ!」
「えぇ・・・やだな・・」
イチロウは正直疲れることが嫌いだった。
「では次に・・頼む」
トーゴが隣の男にマイクを渡した。
 「私は養成場長官のヤレン・ヤルカンドだ。まぁ・・がんばりたまえ・・・」
ヤレンのスピーチはやる気を感じなかった。
「大佐、こんなんじゃ駄目ですよ」
ヤレンの隣の女の人が文句を言っている。
 ヤレンにマイクを返されたトーゴがまた話し出すのに時間はかからなかった。
「出発は明日!支度して十時にまたココだ!では終わり!」
 トーゴはマイクのスイッチを切ろうとしたが、ふとあることに気づいてまた喋り始めた。
「あ!ちょっと待て!今回は四十歳以上はお断りだ!訓練に耐えられないからな!以上だ」
こう言うとトーゴがマイクのスイッチを消した。
「ダンディは無理って事ね・・」
 イチロウはさっさと部屋に戻ろうとした。しかし、後ろから誰かに呼び止められ足を止めた。
「やぁ、イチロウさん!」
「えっ?」
イチロウは後ろを振り向いた。
「あっ!コルファン!ヒッキーになったんじゃないの?」
「え?一時的に・・」
「そっか・・で、なんでここに?」
「・・・ぼくも行きたいと思って・・・養成場に」
イチロウは驚いた。コルファンのこんな細い体で大丈夫かと思ったが自分も大差ないことに気づいて何も言わなかった。
「でもコルファンて司令部の人じゃ・・?」
「はい、許可もおりてるんで・・・。それじゃ用事があるんで行きますね」
「あ、うん・・じゃね」
コルファンがイチロウに背を向けた。イチロウもそれを見て部屋へ戻った。
 部屋の扉をあけるとダンディがいきなり近寄ってきた。
「イチロウ君!私も行くことに決めたよ!」
ダンディが目を輝かせて言った。
「あぁ、それ無理だよ。四十以上はいけないよ」
「えっ!?」
ダンディは崩れ落ちた。
「ダンディともお別れだね・・」
イチロウが落ち込んでいるダンディにやさしく言った。
「・・・ぅむ・・・・・」
イチロウは次の日までできるだけ明るく振舞うことに決めた。

 目覚まし時計が鳴り出した。イチロウのだ。
 イチロウはくしゃくしゃな髪でベッドから起き上がった。まだ目が開ききれない。右手で目覚ましを止めるといつものように体を伸ばし始めた。そして時計の時間を見て驚愕した。
「えっ!?もう九時五十分!ヤバイ!」
イチロウはしまったと思ったがすぐに支度に取り掛かった。昨日下準備はしていたのですぐに支度は終わった。イチロウは最後にダンディに挨拶して行こうと思ったが肝心のダンディがベットに居なかった。
「どこいったんだ?」
しかし、もう待っては居られなかった。イチロウはすぐにエントランスまで走った。

エントランスまでは2,3分で着いた。
「では進め!!」
トーゴの声が聞こえる。エントランスに集まった人たちが並んでどこかに進む。イチロウはその列の最後尾に着いた。やがて列は一つの小さな艦に入って行った。
 艦の中は予想通り狭かった。みんなぎゅうぎゅうの状態だ。
「みんな入ったか!?」
トーゴの声だ。
「よし!では出発する!本部まではすぐだから我慢してくれ。それと座った方がいいぞ」
トーゴが言い終わると艦が発進するのを肌で感じた。
 「インビジブルフィールド展開!出力最大!」
ヤレンの声が耳に入った。
 ぎゅうぎゅうの状態が5分ほど続いていたときまたトーゴが声を出した。
「さぁ着いたぞ!みんな降りる準備をしたまえ」
そういうと艦の速度が一気に落ちた。そして地面に着地したであろう振動がきた。
 イチロウは出口に一番近いところに居たためすぐに暑苦しい艦内から出れた。そしてイチロウはあるものを見た。艦から出てくるもの船員が「おおおー!」と歓声を上げた。
 養成場は強大な建造物だった。すこし古臭い感じがよりいっそうインパクトを大きくした。
「でかい・・・でも見つかるんじゃ・・?」
イチロウのこの質問にトーゴが即答してきた。
「それは大丈夫!見つからないようにいろいろ工夫されているのでね。さぁ!みんな早速入りたまえ!」
そう言われるとみんなぞろぞろと中に入って行った。
 トーゴら数人が入り口近くにあるステージに上り始めた。
「みんなもう入ったか?・・よし!ではコレから我々教官一同の紹介をする!俺とヤレンは終わったから・・まずはパデム、お前から・・」
「え・・?オレから?」
パデムは少し恥ずかしそうだった。
 「えー、私はパデム、戦闘機乗りとしてのスキルを君たちに教える教官だ。よろしく」
パデムが言い終わるとまた男が出てきた。
 「教官の一人のレイ・オ・リムだ。厳しくするつもりだからそのつもりで」
「よし、次、ヘス頼む」
トーゴに呼ばれた男が前に出てきた。
 「私は整備技術担当のヘス・トーイです。よろしく」
その後もぞくぞくと教官がでてきた。
 「私は武器使用を教えるゲイプル・アウマントだ!」
「ふん、でかい声だしやがって。むさ苦しいんだよお前は」
ゲイプルの後ろに立っていた背の高い切れ目の男がみんなに聞こえるよう言った。
「何だと!?もう一回言ってみろ!」
ゲイプルが男に迫って行った。
「おいっ!やめないか!次はお前だぞ!」
トーゴがとっさに二人の間に割って入った。切れ目の男は何も無かったかのように前に出てきた。
 「アトライド・イムだ」
そういうとアトライドは後ろに下がった。
 「これで全員終わりだな。ではコレから皆に検査を受けてもらう!名前や年齢を調べるだけだから心配ない。検査が終わったら部屋に振り分けられるから全員部屋で待機してくれ!では終わり!」
トーゴが話し終わってすぐにイチロウは受付に向かった。なぜなら混み合うのが目に見えてたからだ。
 イチロウは受付を最初に受け付ける事に成功した。受付はトーゴが言うように楽なものだった。
 「名前は?」
「イチロウ・イシイです」
「年齢は?」
「十六です」
「戦闘経験は?」
「バクソウに一度」
 イチロウに質問し終わると受付は目の前のパソコンでなにやら打ち始めた。
「・・・はい、確認しました。ではイチロウさんの希望は?」
「希望とは・・?」
「モビルスーツ、モブルアーマーなどのパイロットか整備士、戦艦のコクピット乗組員など三パターンに分けられますが」
それを聞いたときイチロウは『しまった!』と思った。そんな細かいことまで考えてなかった。
「えー・・・・う〜ん・・・じゃ、じゃあパイロットのほうで」
「分かりました。コレをどうぞ」
そういうと受付はイチロウにAのマークがついたバッチを渡した。
「これはパターンを見分けるバッチですので養成場では常に常備してください。それとあなたの部屋番号は二階の201号室です。ではもうよろしいですよ」
そう言われイチロウは階段を上がり部屋に着いた。
 中は二段ベッドが両脇においてあるだけで何も無かった。とりあえずイチロウは左下のベッドに荷物を置いた。
「変な奴が来ませんように・・・」
とイチロウを願ったものの願いは一人目で崩れた。
 扉が開いて入ってきたのは巨体のオッサン・・。
「ダンディ!?」
イチロウは一瞬ベッドから飛び上がった。
「なんでここに!?」
「ハハハ!どうしても力になりたくてね!受付が私を35歳とは信じてくれなくて困ったよ」
「そりゃそうでしょ!行くときに言ってくれりゃよかったのに!」
「驚かせたくてね!」
「まったく!」
なんやかんやでイチロウはすこしうれしかった。
 ダンディがイチロウの上のベッドに荷物を置いた時、また誰か入ってきた。
「コルファン!」
入ってきたいかにも弱そうな男は驚いた表情をした。
「イチロウさん!ダンディさん奇遇ですね!」
一転コルファンはうれしさを爆発させた。三人がよろこんでる間にまた一人男が入ってきた。
 灰色の髪が目の所まで伸びている。背は高く目はどことなく悲しそうだった。年齢はイチロウと同じくらいだ。男は右下のベッドを陣取った。
 「えーと、僕イチロウ・イシイよろしく」
男がぴりぴりした雰囲気を醸し出しながら口を開いた。
「・・フィル・シガーだ。オレはココに強くなりに来た。だから貴様らとじゃれあうつもりも無い・・。オレを怒らせたくなければ静かにしろ」
そういうとフィルはすぐにベッドに寝転んでしまった。
 まだお互いを牽制しあっているが後にこの四人がレジスタンスを変えることになるとは誰も知らなかった。

 

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