BOOK_M.GIF - 768BYTES機動戦士ガンダム 〜NO WHERE MAN〜
第一章 極東ニッポン

「・・・こうしてアムロ・レイはアクシズを・・・」
二時間目の授業は歴史だ。今日はネオ・ジオンのアクシズ落としについてだ。社会の先生は熱心に教え生徒も一生懸命にノートを取っている。しかし五人だけあの五人だけは上の空だった。
 三年生で二学期ともなると今まで一緒にバカやってた奴らもみんな受験だなんて言ってはなれていく。でもあの五人組はいつも一緒だ。
 今日の帰り五人はまた一緒に帰った。五人の名前はイチロウ、ジロウ、サブロウ、シロウ、ゴロウ、別に兄弟ではない偶然であった。
「お前、中学出たらどうする?」
サブロウが誰に言うことも無く前に向かって言う。するとジロウが
「俺は連邦軍に入りてぇな、戦闘機にのって敵を落とすんだよ」
 ジロウは人一倍正義感が強い。それはいいことだけど迷惑でもあった。ジロウは連邦軍に入ることが夢だったし、なにより本気だった。
 「フゥン、でも今連邦軍は評判悪いぜ。イチロウお前は?」サブロウがまた聞くと
「うん、俺はレジスタンスに入ることになるのかなぁ」
少し弱気に言ったのはジロウがいるからだ。
 ここ数年地球連邦政府は絶対民主主義をかかげているがその実、連邦高官と一部の人間だけが私腹を肥やして生きている状態で第二のティターンズになりつつあった。
 そうなると必然的に反抗勢力が生まれる。それがレジスタンスであり民間人が集まりすでにひとつの組織を形成していた。
 連邦軍に入りたいジロウの手前、イチロウは大きな声でレジスタンスにはいるとは言えなかった。
 「シロウ、お前は?」
少しあせってイチロウは話を変える。
「オレか?オレは・・・ホラ、アレだよなんつったっけ・・・ほら今宇宙で話題になってるヤツ」
「?・・・宇宙海賊か?」
サブロウが言うと
「そうだよ、なんかかっこいいじゃん海賊ってところが」
「そんなんでいいのかよ」
サブロウはシロウの楽天的な所がけっこー好きだった。
「そんでよ海賊になりてぇってわけじゃないけど、憧れるよ。なんつーかロマンだなロマン・・うん」
シロウの目がいつもと違う気がした。
「ロマンねぇ・・俺にゃあわかんねぇな」
サブロウがため息まじりにそう言うと誰も聞いてないのにゴロウが
「俺はさ、なんかでかいことがしたいんだ」
シロウが
「ガンバって」と言った。
「ところでサブロウお前はどうなんだよ」
「ん、いや俺は別に・・・・まだ決めてない・・・かな・・」
サブロウは遠くを見て言う、サブロウはいつも何を考えてるのか分からない、ただ常識はわきまえていた。
「じゃ、俺らこっちだから」
「おう、じゃあな・・また明日な」
イチロウとジロウとシロウはここで別れる、サブロウとゴロウはしばらく黙って歩いた。
 ちょうど商店の前まで来た時ゴロウが
「ちょいとそこの店でパクらねぇか?」
パクるというのは『万引きをする』ということだ。
「いやだよ」
サブロウは機嫌悪そうに言った。ゴロウは悪っぽいのに憧れてるところがあり、サブロウはそういうときのゴロウは嫌いだった。
「ビビってんのか?」
「そんなんじゃない」
「じゃあ一人でやるからお前は帰れよ」
「勝手にしろ」
そういうとサブロウは足早に家に帰った。
“やっぱり止めとけばよかったかな?”
と思った。
 “ゴロウはどうなったかな、もし見つかったらアウターコロニー行きだぞ”
家に帰ってもずっとそう思っていた。
 近年、犯罪者人口が増加している。その割合は三○%つまり十人に三人は犯罪者なのである。この問題に対して地球連邦政府は、『アウターコロニー』による解決を求めた。
 SIDE4テキサスに建設されたコロニーは増えすぎた犯罪者を収容するためのコロニー。宇宙、地球を問わず犯罪を犯した者はみな収容コロニー行きだ。老若男女を問わず全て収容所行き。犯した罪が万引き程度の小さな犯罪でも。犯罪者のための犯罪者だけのコロニー。それゆえ『アウターコロニー(つまはじき者のコロニー)』と呼ばれている。もちろん刑期なんてない。一度はいったらそれっきり、一生そこで生きなくてはならない。
 この企画により犯罪者は激減したがそれだけだった。表立って犯罪を犯す人はいなくなったが、隠れたテロリスト達は五万といる。最近アウターコロニーが大きな動きをみせているという噂があるが、あくまでも噂。連邦軍は犯罪者をコロニーに送るだけでコロニーの中のことはまったく分からないからだ。
 サブロウはゴロウの事を考えながら寝た。
 今、世の中には、連邦、レジスタンス、海賊、アウター、民間人の五つの種類の人間がいる。
 ここは極東ニッポン。戦争はまだ始まっていない。

 

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